一族経営の会社に入社すること、それは、居候するということ。

 いざなぎ景気を超す長期の景気回復がつづくわが国の製造業にあって、業績不振にあえぐ三洋電機は、来年3月末までに国内外で2,200人(国内で約1,000人の応募を見込み、その他、自然減で500人、海外勤務者約700人)を削減すると発表した。

 退職金の加算など人員削減にかかる費用約210億円を含む構造改革費用400億円を計上するため、来年3月期の連結最終損益は500億円の赤字に転落するという(当初予想は200億円の黒字)。 これで最終赤字は3期連続。野中ともよさんを招いて立案した中期経営計画も未達に終わりそうだ。当時、「不退転の決意」で打ち出した中期経営計画も、わずか1年で修正を迫られている。

 中期経営計画が未達で終わるというのは、いかに経営陣の才覚がなく、見通しが甘いかであるが、私の勤める会社も似たように中期経営計画を達成した試しのないダメ会社だから親近感を覚えてしまう。
 ともあれ、同社は規模から言えば大企業である。現在、従業員数は、国内に3万2500人である。ロンドンのピカデリーサーカスの有名な交差点で今宵もSANYOのあの広告はまばゆいばかりに輝いていることだろう。そう、グローバルカンパニーなのである。なるほど、海外の従業員7万2,500人を誇るだけのことはある。

 ところで、三洋電機の創業者の井植歳男氏についてご存知だろうか?彼の姉の夫は松下電器の創業者の松下幸之助、その人である。また、妹の夫は松下電器副社長、中尾哲二郎という華麗な名門である。
 井植歳男氏は21年間指揮をとった後、社長職を弟・祐郎氏、次いで末弟・薫氏に譲り、その後、社長に就いたのは息子の敏氏である。そして現在の社長は、孫の敏雅氏である。
 筋金入りの一族経営である。
 よく言うところの、「初代が会社を大きくして、二代目が浪費して、三代目が会社をつぶす」というパターンそのものである。
 10万人以上の社員が、今宵も眠れない夜を過ごしている。当然、経営陣の責任を問う声も強まっている。
 しかしである。
 一族経営というのは大したものである。
 井植敏雅社長は24日の会見で、責任を問う取材陣の質問に対し、こう回答し社長のポストに恋々とするのであった。

 「構造改革をやり切り、収益を出せる体質にするのが幹部の責任」。

 さきほど、同社のIR情報を眺めていたら、三洋電機にあゆみというページで目をむいた。能天気に創業者井植家を持ち上げると同時に、前社長の「私の履歴書」を全編掲載しているのだ。そう、三洋電機は、井植家の所有物であり、株主のものでも、ましてや従業員のものでもないのだ。きっと残業代、休日出勤代も出ないでも働く世界の三洋マン・ウーマンは、三浦綾子「氷点」で熱演を演じた石原さとみよろしく、自分の悲運を嘆き、時に慟哭・嗚咽するのかと思い、わたしは涙がでそうになるのでありました。

 どうか、現社長が目を覚ましますように。


The Emperor's New Clothes.jpg
おじいちゃんが建てた会社を、今、ボクの好きにしていますが、何か?
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